研究について
研究のねらい
現在の建物は、大規模な地震動に襲われても、倒壊・崩壊しないように建設されていますが、過去の大きな震災では、古い建物などが多く倒壊しています。




ひとたび、大規模地震が起きると建物が倒壊しなくとも、室内の家具の転倒、物品の散乱、天井、内装部材の損傷、社会活動の混乱など、社会活動の継続困難や我々の生活を脅かす何らかの被害が発生してしまいます。これらは過去の震災でも発生しており、今後想定されている首都直下地震や南海トラフ地震などでもこのような被害の発生が懸念されています。




そこで本研究では、地震後においても社会活動を継続または迅速に回復させるため、速やかな被害状況評価を行い、建物などの継続使用の可否を判断する手法の検討と、これらの地震被害を軽減化させ社会活動を継続させるための対策技術に関する研究開発を行っています。




地震災害での原因別負傷・死亡者数

平成7年兵庫県南部地震での負傷原因別負傷・死亡者数
調査対象:120世帯とその世帯員277人
負傷者死亡数 24名
出典:「阪神大震災による建造物の損壊と負傷に関する実態調査報告書」阪神大震災による建造物の損壊と負傷に関する実態調査委員会

平成28年熊本地震における室内での受傷の原因
死亡4名、負傷者134名
室内空間を中心とした機能維持のための研究会調査
人的被害の要因において、室内空間(環境)による影響は大きく、これらの対策と被害評価(即時情報)が地震災害の軽減に大きく貢献できるものと考えられる。(小規模地震ではより顕著)
「建物ドック」・「建物トリアージ」による都市機能のレジリエント化
地震時に室内でどのようなことがおきるのかを解明し、その被害から大切な人、大切なものを守るためにはどうすべきかについて明らかにすることです。
具体的には、発災前、建物の性能評価や、発災後のAI技術を用いた、画像、音響データによる被害判定度の提示などを実施しています。

室内~都市災害マルチモニタリング技術の研究開発
室内環境における地震被害は、様々なものに関連しています。例えば、建築に関するもの、家具家電に関するもの、生活物品に関するものが我々の生活環境には存在します。この研究を推進するには、これらのものなどに関わる人たちと実施していくことが必要で、防災科学技術研究所のみで実施するのは困難であり、多くの“仲間たち”とともに協力して、成果を共有することが重要です。

